忘れられない言葉

東京から大阪へ

長女がもうすぐ幼稚園という時、夫は転勤になった。

その時は東京に住んでいた。

転勤先は大阪だった。

その当時の私は、大阪に行くにはけっこうの覚悟と勇気が必要だった。

だいたい関東を離れるのは初めてのことだ。

長男は1歳になったばかりだった。

近所には子どもたちの友だちがいっぱいいたし、私もママ友と楽しい日々を送っていた。

それはずっと続くと思っていた。

正直言って、大阪行きは本当に嫌だった。

関西は私にとって未知の世界。

それに、小さい子どもを連れて冬の引っ越しはきつかった。

案の定、引っ越し直後に夫と私、長女の3人が高熱を出した。

元気なのは長男だけ。

親も友だちも知り合いも誰もいないところで、身動きがとれなくなった。

冷蔵庫は当然空っぽ。

何も食べるものがない。

スーパーの場所だってよく分からない。

途方に暮れた。

 

なんで食パン?

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そんな時、夫が買い物に行くと言ってくれた。

材料を買っても料理などできる状態ではなかったので、私は夫に直ぐに食べられるパンを買ってきてと頼んだ。

そして、夫はパンを買って来てくれた。

ところが夫が買ってきたパンは「食パン」

しかも、食パンのみ。

私が買ってきてほしかったのは、調理パンとか菓子パン。

「食パンだけ買ってきてどうすんのよー!」

なんで夫が食パンを買ってきたのか謎だけど、とにかく私はパンを買って来てもらったにもかかわらず、夫に怒った。

今から思えば、夫も高熱があり、正常な判断ができなかったのだろう。

フラフラでやっとの思いでパンを買ってきたのに奥さんにめっちゃ怒られた夫。

ちょっと同情する。

でもその時の私は、なんだか悲しくて、悔しくて(何が悔しいのか分からない)情けなくて半泣きだった。

夫の一言

ところが、そのときの夫の言葉は忘れることができない。

「苦労を楽しんでこそ人生でしょ」

あれから24年が経った。

4人の子どもたち全員がアトピーと喘息、そして発達障害。

おまけに不登校。

我ながら、よくやってきたと思う。

ちょっと悲惨な感じもするが、けっこうへらへらと楽しくやってきたような気がする。

それは、夫が言った
「苦労を楽しんでこそ人生でしょ」
という言葉が心の中にあったからじゃないかと思う。

ところが、こんな良いことを言ったのに言った本人はすっかり忘れてた。

「えっ おれ、そんなに良いこと言ったの?」

「はい。言いました」

私の記憶力が良くて良かった(^_-)-☆

 

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